遺伝子工学に欠かせないGel loading bufferのコストダウンについて考える
目的
生物系のラボでは日々、核酸の電気泳動をしていると思います。この際に必要となる試薬の1つが、Gel loading bufferです。様々なメーカーから市販されていますが、これまたかなり値段の幅があります(笑)。ところが多くの人は、Gel loading buffer自体に拘りがあるわけではなく、ラボにあるものを使用しているのではないでしょうか。特に学生さんなどは、昔からラボで代々使用されているGel loading bufferを言われるがまま使用している方が多いと思いますが、実は高い部類の製品を使用している可能性が高いです。今回は、Gel loading bufferのコストダウンについて記事を書こうと思います。
様々なタイプのGel loading buffer
一口にGel loading bufferといっても色々あります。ここでは簡単に書いてみようと思います。
6xか10x
これはサンプルに対して1/5量いれるのか1/9量いれるのかという違いですね。私は6xのほうを好んで使用しています。何故かというか、10xだと1 ulをアガロースゲル電気泳動へアプライするときにシンドイからです(取れない)。
SDSが入っているかどうか
Gel loading bufferにSDSが入っているかどうかの違いですね。多くの用途ではどっちでも良いかも知れないですが、用途によってはSDSが入っていると都合が悪い場合があります。例えば、核酸となにかの複合体を電気泳動する際にはSDSが入ってると壊れることがあります。私も、過去に悩んだことがありました(笑)。
入っている色素の種類
ほとんどのGel loading bufferには、電気泳動の進行具合を知るための色素が入っています。Bromophenol blue、Xylene cyanol、Orange Gなどが利用されます。これらは移動度が異なるので、少し注意が必要になります。 *ニッポンジーンのウェブサイトより
Loading Buffer|遺伝子工学研究用試薬|ニッポンジーン
核酸染色試薬入りかどうか
一部のGel loading bufferには、核酸染色試薬が入っています。所謂、先染めというやつです。サンプルと混ぜて泳動後、即撮影が可能です。私は好みません(笑)。
様々なメーカーのGel loading buffer
とりあえず、普通のGel loading bufferについてリストアップしてみました。普通のというのは核酸染色なしのタイプと言うことです。ワタシは、1 ulのサンプル量でいつもおこなっていますので表の1/10のコストです。
メーカー | 製品名 | 定価(税抜) | 1 sample (10 ulスケール)あたりの単価 |
---|---|---|---|
タカラバイオ | 6× Loading Buffer | 11500円(キャンペーン対象外) | 2.3円 |
タカラバイオ | 10× Loading Buffer | 11500円(キャンペーン対象外) | 1.15円 |
ニッポンジーン | Loading Buffer | 4000円(キャンペーン時; 2400円) | 0.4円(キャンペーン時; 0.24円) |
ニッポンジーン | 6 x Loading Buffer Triple Dye | 4000円(キャンペーン時; 2400円) | 2.6円(キャンペーン時; 1.6円) |
ニッポンジーン | 6 x Loading Buffer Double Dye | 4000円(キャンペーン時; 2400円) | 2.6円(キャンペーン時; 1.6円) |
ニッポンジーン | 6 x Loading Buffer Orange G | 4000円(キャンペーン時; 2400円) | 2.6円(キャンペーン時; 1.6円) |
ThermoScientific | BlueJuice™ Gel Loading Buffer (10X) | 6100円(キャンペーン対象外) | 2.0円 |
ThermoScientific | DNA Gel Loading Dye (6X) | 6900円(キャンペーン対象外) | 2.76円 |
NEB | Gel Loading Dye, Purple (6X) | 7100円(キャンペーン対象外) | 3.55円 |
Merck | Gel Loading Buffer for NA electrophoresis | 4500円(キャンペーン対象外) | 1.8円 |
SMOBIO | ExcelDye 6X DNA Loading Dye, Orange | 7600円(キャンペーン対象外) | 1.52円 |
SMOBIO | ExcelDye 6X DNA Loading Dye, Green | 7600円(キャンペーン対象外) | 1.52円 |
SMOBIO | ExcelDye 6X DNA Loading Dye, Blue | 7600円(キャンペーン対象外) | 1.52円 |
SMOBIO | ExcelDye 6X DNA Loading Dye, Tri-color | 8200円(キャンペーン対象外) | 1.64円 |
東洋紡 | 6×Loading Dye | 1000円(キャンペーン対象外) | 2円 |
(2018年12月現在)
安さ重視にて探せる範囲でリスト化してみましたが、こう眺めてみると価格差があまりないですね、安い試薬なので。。。ワタシの使っていたものは、タカラバイオ→東洋紡→ニッポンジーン→という感じです。ちなみに、Orange Gが好きです。
結局どれがいいの?
研究費に乏しい貧乏研究者なワタシは、コストダウンを考えた結果、現在はニッポンジーンのOrange Gのものを購入して使用しています。これは、1 runあたり1.6円(1 ulスケールでは0.16円)という安い部類にあります。
使い方
ワタシは、チューブとチップが勿体ないので。。。パラフィルムを少し切って置く→Gel loading bufferを必要量スポットする→サンプルを取る→パラフィルム上で混合→そのまま取ってアガロースゲルにアプライ、という感じで作業しています。チップもチューブも節約できますし、何より作業量が少なくて楽ちんです(笑)。
終わりに
このように、普段使用する試薬であるGel loading bufferの場合、製品を変更するだけで少しだけコストカットが可能になりました。現在、ワタシは用途によって自作のGel loading bufferを使うか、既製品を使うかを分けています。自作のGel loading bufferはいくら使ってもコストは限りなくゼロに近いので(笑)!レシピは次回の記事で公開したいと思っています。
研究費もマンパワーもないけど、なんとか実験して論文を出していきたいですね。