蛋白質のSDS-PAGEに欠かせない分子量マーカーのコストダウンについて考える
目的
生物系のラボでは日々、SDS-PAGEをしていると思います。リコンビナント蛋白質の発現確認、精製度のチェックなどなど幅広い用途でSDS-PAGEを行っています。以前の記事では、CBB染色液を自作してコストダウンする件について紹介しました。
kanenashi-kenkyu.hatenablog.com
染色液とならんで非常に重要な試薬が、分子量マーカーです。様々なタイプの分子量マーカーが市販されていますが、これまた結構高いです(笑)。ところが多くの人は、分子量マーカー自体に拘りがあるわけではなく、ラボにあるものを使用しているのではないでしょうか。特に学生さんなどは、昔からラボで代々使用されている分子量マーカーを言われるがまま使用している方が多いと思いますが、実は高い部類の製品を使用している可能性が高いです。今回は、これら分子量マーカーのコストダウンについて記事を書こうと思います。
分子量マーカーについて
SDS-PAGE用の分子量マーカーには、主に着色済のものと未着色のものがあります。着色済だと、ウェスタンブロットなどで膜に転写する際に便利です(但し、ワタシはウェスタン用に別のマーカーを使っているのでメリットにはなっていません)。また、泳動の様子が観察できるなどのメリットもあります。ちなみにワタシは未着色のものが好きです。というのも、ケチれる余地が大きいからです(笑)。
様々なメーカー品のコスト
とりあえず、様々なメーカーの安い部類に入る分子量マーカーを探してみました。以下がリストです。
未着色
メーカー | 製品名 | 種類 | 定価(税抜) | 1 runあたりの単価 |
---|---|---|---|---|
タカラバイオ | Protein Molecular Weight Marker | 未着色 | 13000円 | 65円 |
タカラバイオ | CLEARLY Protein Ladder (Unstained) | 未着色 | 40000円 | 133円 |
バイオダイナミクス | DynaMarker® Protein Eco | 未着色 | 14000円 | 116円 |
ATTO | AE-1440-2 EzStandard | 未着色 | 14000円 | 63円 |
Abcam | Molecular Weight Marker | 未着色 | 30000円 | 300円 |
エムエステクノシステムズ | Protein MW Marker, Wide Range | 未着色 | 29000円 | 174円 |
APRO | 分子量マーカー Low(3本セット) | 未着色 | 40500円 | 67.5円 |
ThermoFisher Scientific | PageRuler™ Unstained Low Range Protein Ladder | 未着色 | 17000円 | 170円 |
(2018年6月現在)
着色済
メーカー | 製品名 | 種類 | 定価(税抜) | 1 runあたりの単価 |
---|---|---|---|---|
タカラバイオ | CLEARLY Stained Protein Ladder | 着色済 | 40000円 | 133円 |
日本ジェネティクス | BLUE Star Prestained Protein-Ladder | 着色済 | 22000円 | 132円 |
バイオクラフト | タンパクラダーマーカー | 着色済 | 7800円 | 156円 |
バイオダイナミクス | DynaMarker® Protein MultiColor III, Large | 着色済 | 69800円 | 116円 |
富士フィルム和光純薬 | WIDE-VIEW™ Prestained Protein Size Marker | 着色済 | 18000円 | 180円 |
Bio-rad | プレシジョン Plus プロテイン™ブルースタンダード | 着色済 | 18600円 | 372円 |
SMOBIO TECHNOLOGY, INC. | ExcelBand All Blue Regular Range Protein Marker | 着色済 | 8900円 | 89円 |
APRO | プレステインドマーカー Low(3本セット) | 着色済 | 40500円 | 135円 |
ThermoFisher Scientific | PageRuler™ Prestained Protein Ladder, 10 to 180 kDa | 着色済 | 18600円 | 186円 |
(2018年6月現在)
探せる範囲でリスト化してみましたが、こう眺めてみると価格差がかなりありますね。ワタシの使っていたものは、Bio-rad→バイオクラフト→APROという感じです。
結局どれがいいの?
研究費に乏しい貧乏研究者なワタシは、コストダウンを考えた結果、現在はAPROの未着色分子量マーカーを購入して使用しています。これは、1 runあたり67.5円という格安の部類にあります。長年使用していますが、全く問題ないです。ちなみにミニゲルで1 ul/laneにしているので15.5円/runになっています。値引きも他メーカーより大きいのでお得です。
終わりに
このように、普段使用する試薬では分子量マーカー場合、製品を変更するだけで半額近いコストカットが可能になりました。年間で数万円浮くんじゃ無いでしょうか。浮いたお金で引きちぎってしまったシールガスケットを買いまくれますね(笑)!
研究費もマンパワーもないけど、なんとか実験して論文を出していきたいですね。