ミニプレップを自作Buffer+単品カラム購入で頑張ってみる

目的

 生物系のラボでは日々、プラスミドの精製でミニプレップをしていると思います。来る日も来る日もひたすらミニプレップをしているせいで感覚が麻痺している(笑)と思いますが、結構コストがかかっています。。。

 以前の当ブログ記事では、格安ミニプレップキットについて紹介しました。 kanenashi-kenkyu.hatenablog.com

 上記の記事では、単純に使用するキットを変更してコストダウンをしようという話でした。今回は、これをもう一歩進めて、

  • スピンカラムだけ単品で購入し、
  • Bufferを自作してコストダウン

というところを記事に書こうと思います。

単品カラムはどこから買う?

 まずは、必要な単品カラムを調達します。様々なメーカーが単品カラムを販売していますが、ここは価格面で下記のもの一択でしょう(主観)。

メーカー 製品名 定価(税抜) 入数 単価
Favorgen Plasmid DNA Extraction mini Column 8500円 100入 85円

(2018年5月現在)

 購入に当たっては、やはりキャンペーンを利用しましょう(笑)。下記のキャンペーンが、例年11月〜3月末まで行われています。これを利用することによって、300 prep分のカラムが17000円(からの値引き)で手に入れることが出来ます。 f:id:kanenashi_kenkyu:20180602121841j:plain

ミニプレップ用バッファーを自作しよう

 貧乏研究者なワタシにとって、自分で作れるモノは自分で作ってコストダウンが必須であります。インターネットの海原には素晴らしい先人たちの集合知が隠されており、ミニプレップ用バッファーレシピが数多く公開されています(笑)これらはいずれも簡単に作れます。

Buffer P1 (FAPD1)・・・50 mM Tris-HCl pH 8.0、10 mM EDTA、100 µg/ml RNase A;4℃保存

試薬 加える量 メーカー カタログ番号 コスト
1 M Tris-HCl pH 8.0 2.5 ml 自作 レシピは記事中にあり 0.8円
0.5 M EDTA pH 8.0 1 ml 自作 レシピは記事中にあり 2.5円
ミリQ 46.5 ml 自前
RNase A 5 mg ナカライテスク 30141-14 525円(キャンペーン利用時)

Buffer P2 (FAPD2)・・・200 mM NaOH、1% SDS;室温保存

試薬 加える量 メーカー カタログ番号 コスト
ミリQ 60 ml 自前
NaOH 0.8 g 関東化学 37184−00 2円
SDS 1 g 富士フィルム和光純薬 191−07145 21円
ミリQ 100 mlにメスアップ 自前

Buffer N3 (FAPD3)・・・4.2 M Gu-HCl、0.9 M potassium acetate、pH 4.8;室温保存

試薬 加える量 メーカー カタログ番号 コスト
ミリQ 50 ml 自前
酢酸カリウム 17.67 g 富士フィルム和光純薬 160−03175 101円
グアニジン塩酸塩 80.25 g 富士フィルム和光純薬 078−05003 1035円(キャンペーン利用時)
このままでは溶けないため、酢酸(cc 10 ml)でpH 4.8にする 富士フィルム和光純薬 017−00251 16円
ミリQ 200 mlにメスアップ 自前

Buffer PB (W1 buffer)・・・5 M Gu-HCl containing 30% isopropanol;室温保存

試薬 加える量 メーカー カタログ番号 コスト
ミリQ 50 ml 自前
グアニジン塩酸塩 95.53 g 富士フィルム和光純薬 078−05003 1232円(キャンペーン利用時)
このままでは溶けないため、ミリQ加える 140 mlにメスアップ 自前
溶けたらイソプロを加える 60 ml 関東化学 32435−00 114円

Buffer PE (Wash buffer)・・・10 mM Tris-HCl pH 7.5 containing 80% etanol;室温保存

試薬 加える量 メーカー カタログ番号 コスト
ミリQ 80 ml 自前
Tris 0.61 g 富士フィルム和光純薬 203−06277 ほぼゼロ
6 M HClでpH 7.5にする cc 500 µl 関東化学 18078−70 ほぼゼロ
ミリQ 100 mlにメスアップ 自前
エタノール 400 ml 関東化学 14033−00 1920円

1 M Tris-HCl pH 8.0;4℃保存

試薬 加える量 メーカー カタログ番号 コスト
DIW 350 ml 自前
Tris 60.55 g 富士フィルム和光純薬 203−06277 316円
濃HClでpH 8.0にする 関東化学 18078−70 40円ぐらい
DIW 500 mlにメスアップ 自前
オートクレーブ

0.5 M EDTA pH 8.0;室温保存

試薬 加える量 メーカー カタログ番号 コスト
DIW 70 ml 自前
EDTA 18.61 g 関東化学 14097−00 246円
NaOH 2 gぐらい 関東化学 37184−00 5円ぐらい
5 M NaOHでpH 8.0にする 適量 自作
DIW 100 mlにメスアップ 自前
オートクレーブ

プロトコル

 Favorgenやキアゲンなどメーカーのプロトコルに従って行うだけです。キットと同等の収量と品質で全く問題ありません。ちなみにElution bufferは普通の10 mM Tris-Cl, pH 8.5です。これも自作可能ですね。

コストに関する考察

 今回自作したbufferを300 prep分の量に換算すると、3150円ほどかかることが計算から判明しました(笑)。。。結構高いですね。。。一方、Favorgenのキットは17000円です。単品カラムを購入した場合300個で値引きを鑑みても、14000円弱と思います。ということは、単品カラム+Buffer自作だと、17000円程度になりますねΣ(゚д゚) エッ!? ということは、、、ミニプレップキットとコストが変わらないことが判明しました!!!意味ないですね!!!マンパワーを考えるとマイナスも甚だしです\(^o^)/オワタ

終わりに

 今回の記事から、ミニプレップはBuffer自作+単品カラム購入ではなく、ミニプレップキットを買っておけ。。。という結論に到りました。しかしながら、Buffer類を自作できるということを理解しておくと、他のところでも役に立つのではないかと思います。

研究費もマンパワーもないけど、なんとか実験して論文を出していきたいですね。

参考

Qiagen Buffers - OpenWetWare

What is the composition of Buffer EB? - QIAGEN

1 M Tris-HCl 溶液(トリス塩酸バッファー, pH 8.0)の調整 | LifeScienceProject

0.5M EDTA (pH8.0)の調整 | LifeScienceProject