遺伝子工学に欠かせないDNAポリメラーゼのコストダウンについて考える
目的
生物系のラボでは日々、PCRをしていると思います。遺伝子の発現チェック、クローニング、コロニーPCR、ジェノタイピングなどなど幅広い用途でPCRを行っています。この際に必要となる試薬の1つが、DNAポリメラーゼです。様々なメーカーから種々のタイプのDNAポリメラーゼが市販されていますが、これまたかなり値段の幅があります(笑)。ところが多くの人は、DNAポリメラーゼ自体に拘りがあるわけではなく、ラボにあるものを使用しているのではないでしょうか。特に学生さんなどは、昔からラボで代々使用されているDNAポリメラーゼを言われるがまま使用している方が多いと思いますが、実は高い部類の製品を使用している可能性が高いです。今回は、これらDNAポリメラーゼの中でも、どうでも良い用途に使用するDNAポリメラーゼのコストダウンについて記事を書こうと思います。
DNAポリメラーゼの種類
DNAポリメラーゼは様々なタイプのものがあり、用途により選択する必要があります。
本記事では、とりあえず増えればええわ(笑)時に使用するDNAポリメラーゼに絞っていきます。つまり、価格のみ重視です。
様々なメーカーの安いDNAポリメラーゼ
とりあえず、マスターミックスタイプかつ色つきの製品をまとめてみました。というのも、かったるいのでワタシはこのような用途のPCRでは、マスターミックスタイプかつ色つきしか使いたくないからです。ちなみに、ほぼ全てのメーカーが50 ul反応を1 runとしています。ワタシは、10 ulの反応系でいつもおこなっていますので表の1/5のコストです。もっと減らせますが、電動マイクロピペットの分注下限が壁になっています(笑)。
メーカー | 製品名 | 定価(税抜) | 1 run (50 ulスケール)あたりの単価 |
---|---|---|---|
東洋紡 | Quick Taq® HS DyeMix | 44000円(キャンペーン対象外) | 44円 |
ニッポンジーン | Gene RED PCR Mix Plus | 67000円 (キャンペーン時;33500円) | 70円(キャンペーン時;35円) |
ニッポンジーン | Hot-Start Gene RED PCR Mix | 100000円(キャンペーン時;60000円) | 104円(キャンペーン時;62.5円) |
Promega | GoTaq® Master Mixes | 78000円(会員価格;39000円) | 78円(会員価格;39円) |
NEB | Hot Start Taq 2X Master Mix | 26400円 (キャンペーン対象外) | 52.8円 |
タカラバイオ | EmeraldAmp® PCR Master Mix | 66000円(キャンペーン対象外) | 82.5円 |
ThermoFisher Scientific | PCR Master Mix (2X) | 54100円(キャンペーン対象外) | 54.1円 |
(2018年7月現在)
安さ重視にて探せる範囲でリスト化してみましたが、こう眺めてみると価格差がかなりありますね。ワタシの使っていたものは、Promega→タカラバイオ→東洋紡という感じです。
結局どれがいいの?
研究費に乏しい貧乏研究者なワタシは、コストダウンを考えた結果、現在は東洋紡のQuick Taqを購入して使用しています。これは、1 runあたり44円(10 ulスケールでは8.8円)という格安の部類にあります。長年使用していますが、全く問題ないです。但し、遅いです。。。早く帰りたいならGene Redでしょうか。こちらは超速いです。
なお、東洋紡は値引きがなかなか良かったり、おまけを貰えたりするので納入価ベースでは圧倒的にコスト安になることが多いです。価格交渉してみて下さい!
終わりに
このように、普段使用する試薬であるDNAポリメラーゼの場合、製品を変更するだけで半額以上のコストカットが可能になりました。年間で数万円浮くんじゃ無いでしょうか。浮いたお金で電気泳動装置を買えちゃいますね(笑)!
研究費もマンパワーもないけど、なんとか実験して論文を出していきたいですね。