SDS-PAGEに欠かせないCBB染色液を自作してみる(モダンversion)

目的

 生物系のラボでは日々、SDS-PAGEをしていると思います。リコンビナント蛋白質の発現確認、精製度のチェックなどなど幅広い用途でSDS-PAGEを行っています。この際、蛋白質のバンドを可視化するために様々な染色法が存在します。中でも、CBB染色は安い・楽ちんなので汎用されています。
 以前の記事では、CBB染色液の自作によるコストダウンについて書きました。

kanenashi-kenkyu.hatenablog.com

 この時は、昔ながらのレシピを用いたCBB染色液を題材にしました。今回は、モダンであり楽ちんかつコスパ最強なレシピを紹介します。

モダンなCBB染色液のレシピで自作してみる

 研究費に乏しい貧乏研究者なワタシは、コストダウンを考えた結果、自作の道を選びました(笑)長らく昔ながらのレシピのものを使用していましたが、近年ではもっと優れたモダンレシピを使用しています。何が優れているか?メタノール・酢酸フリー(染色液も脱色液も)かつCBB使用量が少ない、またバックグラウンドが低いことです。それでは、作製してみます。

試薬 加える量 メーカー カタログ番号 コスト
DIW 800 ml 自前
クエン酸一水和物 15 g 富士フィルム和光純薬 035−03495 51円
βシクロデキストリン 5 g 富士フィルム和光純薬 034-08345 102円
CBB R-250 20〜80 mg 富士フィルム和光純薬 031-17922 12円(60 mg使用時)
DIW 1000 mlにメスアップ 自前

 一晩ぐらい攪拌して完成です。室温保存して下さい。このレシピを用いると、1 Lで160円ぽっきりで作製することが出来ました。やっすい既製品のざっくり1/50ぐらいのコストですね。ホクホクです。
 CBBの添加量ですが、20 mgでも全然OKです。ワタシは、少しバンドを濃くしたかったので60 mgにしています。

プロトコル

 それでは、実際のプロトコルについてです。まず初めにオーソドックスなプロトコルを示し、次に電子レンジを利用した時短プロトコルに進みます。

通常プロトコル

 まずはオーソドックスなプロトコルです。

プロトコル

SDS-PAGE
↓ゲルをCBB染色(20 ml)に浸す
↓振盪(30〜120分程度)
↓CBB染色液を捨てる
↓DIWで2回ぐらいリンス
↓DIWに浸し、キムワイプ等をいれる
↓振盪(180分ぐらい?)
↓DIWとキムワイプ交換
↓振盪(overnight?)
撮影

結果

f:id:kanenashi_kenkyu:20180613133527j:plain  上の写真を見ると分かると思いますが、脱色しなくても全然OKですね。ちゃんとしたデータとして残したいときは60〜300分ぐらい一度DIWで脱色するだけで綺麗になります。

電子レンジを使って時短する

 次に、電子レンジを使って時短する方法です。昔ながらのCBB染色液での記事も参考にして下さい。 https://kanenashi-kenkyu.hatenablog.com/entry/jitan-old-cbb-stainkanenashi-kenkyu.hatenablog.com

プロトコル

SDS-PAGE
↓ゲルをCBB染色(20 ml)に浸す
↓電子レンジ(600 Wで30〜35秒ぐらい;沸騰直前ぐらい)
↓振盪(5分)
↓CBB染色液を捨てる
↓DIWで2回ぐらいリンス
↓DIWに浸し、キムワイプ等をいれる
↓電子レンジ(600 Wで1〜2分ぐらい。脱色液の量に依存;沸騰直前ぐらい)
↓振盪(10分)
撮影

結果

  • 電子レンジでチンした後に5分振盪で染色ばっちりです。
  • 脱色は、電子レンジでチンした後に10分振盪を1サイクルでOKです。
  • バックグラウンドをもっと下げたい人は、その後overnightで振盪して下さい。 f:id:kanenashi_kenkyu:20180613150153j:plain

    終わりに

     このように、コスト安、楽ちん、早いモダンなCBB染色液を適当に自作することによってコストが1/50以下になりました。使用量にもよりますが、万単位のコストカットになるのではないでしょうか!浮いたお金で分子量マーカーを買えますね(笑)。
     ちなみに、CBBと水と塩酸だけで作るレシピもあるようです。しかし、これはSDS-PAGE後に水でゲルを洗うというステップが必須らしいのでめんどくさそうです(笑)。

研究費もマンパワーもないけど、なんとか実験して論文を出していきたいですね。