遺伝子工学に欠かせないサンガーシーケンスのコストダウンについて考える
目的
生物系のラボでは日々、様々なプラスミドを作製していると思います。この過程で任意のプラスミドに組み込んだ目的遺伝子の配列を確認する必要があります。この際に必要となる試薬が、BigDyeです。最近では、サードパーティー製の試薬も出てきたりするのですが、長年に渡りほぼ1択でした。故に、ぼったくり高いです(笑)。今回は、BigDyeを使ったサンガーシーケンスのケチケチプロトコルについて記事を書こうと思います。
BigDyeの価格
どのぐらいBigDyeが高いかというと。。。ほとんどの用途で選択するBigDye™ Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kitの場合、昔は、100 reactions用のキットで10万円しなかったような気がするのですが、最近では154000円もします。つまり、1 sampleあたり1540円(税抜)もします(吐血)。
このところ、サードパーティー製が販売されて売上にダメージがあったのかキャンペーンをしだしました(たった20%オフですが)。
(2018年12月現在)
キャンペーンで入手したとしても1 sampleあたり1232円(税抜)ということで破産してしまうので、実際にはケチって使っている状況です(笑)。
ケチケチプロトコル
ワタシが学生の頃に所属していたラボで最初に習ったときは、マニュアルでは20 ulの反応でBigDye 8 ulのところを、反応液を半量(10 ul)にしてBigDyeを半量の4 ul使うという感じでした。これだけでも、770円/sampleになりますね。
研究費に乏しい貧乏研究者なワタシは、コストダウンを考えた結果、現在はTotal 10 ulの反応液にBigDyeを0.4 ul使うプロトコルをメインにしています。正直、BigDyeは0.32 ulぐらいまでは減らせると思うのですが、色々と試した結果0.4 ulを標準にしています。従って、1サンプルあたり77円になりました(笑)。
反応液量(ul) | BigDye使用量(ul) | 1 sampleあたりの単価 | |
---|---|---|---|
マニュアル通り | 20 ul | 8 ul | 1540円(キャンペーン時;1232円) |
半量プロトコル | 10 ul | 4 ul | 770円(キャンペーン時;616円) |
ケチケチプロトコル | 10 ul | 0.4 ul | 77円(キャンペーン時;61.6円) |
実際のプロトコル
BigDyeを減らしたときに注意し無ければならない点として、反応液のbuffer組成が変わらないよう(最終的に1x bufferになるように)に5x bufferを添加する点です。ちなみにBigDye自体は2.5x bufferになっています。
具体的には下記のmixtureを調製します。
試薬 | 液量(ul) |
---|---|
water | 10 - X - 2.52 ul |
templete (150 – 300 ng程度) | X ul |
10 uM primer | 0.32 ul |
5x buffer | 1.8 ul |
BigDye | 0.4 ul |
終わりに
このように、ルーチンでスルサンガーシーケンスはプロトコルを工夫することによって、1/10〜1/20ぐらいのコストカットが可能になりました。年間で数万〜数十万円浮くんじゃ無いでしょうか。浮いたお金でサーマルサイクラーを追加導入できちゃいますね(笑)!ちなみにワタシは、現在、BigDye自体を使ってません。他の試薬に切り換えてさらにコストカットに成功したので次回のブログではそこらへんを紹介したいと思います。
研究費もマンパワーもないけど、なんとか実験して論文を出していきたいですね。