遺伝子工学に欠かせない高正確性DNAポリメラーゼのコストダウンについて考える
目的
生物系のラボでは日々、様々なプラスミドを作製していると思います。この際に必要となるのが、エラー無く遺伝子産物を増幅する高正確性DNAポリメラーゼ(High-fidelity DNA polymerase)です。昔ながらのインバースPCRや近年のSeamless cloning法の出現により高正確性DNAポリメラーゼの役割は重要性を増しています。
様々なメーカーから高正確性DNAポリメラーゼが市販されていますが、これまたかなり値段の幅があります(笑)。ところが多くの人は、高正確性DNAポリメラーゼ自体に拘りがあるわけではなく、ラボにあるものを使用しているのではないでしょうか。特に学生さんなどは、昔からラボで代々使用されている高正確性DNAポリメラーゼを言われるがまま使用している方が多いと思いますが、実は高い部類の製品を使用している可能性が高いです。今回は、これら高正確性DNAポリメラーゼのコストダウンについて記事を書こうと思います。
様々なメーカーの高正確性DNAポリメラーゼ
とりあえず、網羅的に様々なメーカーの高正確性DNAポリメラーゼを列挙してみます。これらの中でも、伸長反応のスピード、マスターミックスかどうか、正確性の度合いなど様々違いがあります。
メーカー | 製品名 | 定価(税抜) | 1 run (50 ulスケール)あたりの単価 |
---|---|---|---|
東洋紡 | KOD OneTM PCR Master Mix -Blue- | 35000円(キャンペーン時;21000円) | 175円(キャンペーン時;105円) |
東洋紡 | KOD -Plus- Neo | 30000円(キャンペーン時;18000円) | 150円(キャンペーン時;90円) |
ニッポンジーン | Go-to DNA Polymerase | 22500円(キャンペーン時;15750円) | 112.5円(キャンペーン時;78.75円) |
タカラバイオ | PrimeSTAR® GXL DNA Polymerase | 37000円(キャンペーン時;27750円) | 185円(キャンペーン時;138.75円) |
タカラバイオ | PrimeSTAR® Max DNA Polymerase | 31500円(キャンペーン時;23625円) | 315円(キャンペーン時;236.25円) |
タカラバイオ | PrimeSTAR® HS DNA Polymerase | 31500円(キャンペーン時;23625円) | 157.5円(キャンペーン時;118.125円) |
タカラバイオ | PrimeSTAR® HS (Premix) | 23000円(キャンペーン時;17250円) | 230円(キャンペーン時;172.5円) |
タカラバイオ | PrimeSTAR® GXL Premix | 37000円(キャンペーン時;27750円) | 185円(キャンペーン時;138.75円) |
タカラバイオ | PrimeSTAR® HS DNA Polymerase with GC Buffer | 31500円(キャンペーン時;23625円) | 157.5円(キャンペーン時;118.125円) |
NEB | Q5 High-Fidelity DNA Polymerase | 9800円(キャンペーン時;7350円) | 98円(キャンペーン時;73.5円) |
NEB | Q5 Hot Start High-Fidelity DNA Polymerase | 12000円(キャンペーン時;9000円) | 120円(キャンペーン時;90円) |
NEB | Q5 High-Fidelity 2X Master Mix | 16000円(キャンペーン時;12000円) | 160円(キャンペーン時;120円) |
NEB | Q5 Hot Start High-Fidelity 2X Master Mix | 19000円(キャンペーン時;14250円) | 190円(キャンペーン時;142.5円) |
ThermoScientific | Platinum™ SuperFi™ DNA Polymerase | 17500円(キャンペーンなし?) | 175円(キャンペーンなし?) |
ThermoScientific | AccuPrime™ Pfx DNA Polymerase | 65900円(キャンペーンなし?) | 329.5円(キャンペーンなし?) |
(2018年12月現在)
とりあえず探せる範囲でリスト化してみましたが、こう眺めてみると価格差がかなりありますね。ワタシの使っていたものは、タカラバイオ→東洋紡という感じです。
結局どれがいいの?
研究費に乏しい貧乏研究者なワタシは、コストダウンを考えた結果、現在は東洋紡のKOD Oneをメインに、サブとして東洋紡のKOD plus neoを使用しています。KOD oneは、超高速かつマスターミックスであり簡単に速く実験することが出来ます。しかもこれは、1 runあたり105円という安い部類にあります。長年使用していますが、全く問題ないです。懸念の伸長反応の遅さがKOD Oneでは改善されていて早く帰れるようになりました(笑)。なお、東洋紡は値引きがなかなか良かったり、おまけを貰えたりするので納入価ベースでは圧倒的にコスト安になることが多いです。価格交渉してみて下さい!
しかしながら、ニッポンジーンが最近出したGo-to DNA Polymeraseが安くて気になっています。また、NEBのQ5も実は安いのに気づいてしまいました。が、ワタシは日本の企業の製品を使いたいので東洋紡で行きたいと思っています。ちなみにワタシはタカラバイオよりも東洋紡派です。価格も、性能もそう思っています。
終わりに
このように、普段使用する試薬である高正確性DNAポリメラーゼの場合、製品を変更するだけで半額ぐらいのコストカットが可能になることがあります。年間で数万円浮くんじゃ無いでしょうか。浮いたお金でゲルメーカーを買えちゃいますね(笑)!
研究費もマンパワーもないけど、なんとか実験して論文を出していきたいですね。