微生物の培養に欠かせないアガーのコストダウンについて考える

目的

 生物系のラボでは日々、大腸菌酵母などの微生物を培養していると思います。微生物自体を用いる研究だけで無く、発現系の構築などなど幅広い用途で微生物を培養する必要があります。 その際に、寒天培地が用いられます。寒天培地に必須な試薬が、寒天(当たり前だろ)になるわけです。
 ところが多くの人は、アガー自体に拘りがあるわけではなく、ラボにあるものを使用しているのではないでしょうか。しかし、アガーは意外と高価であり、これがまた結構コストがかかっています。
 特に学生さんなどは、昔からラボで代々使用されているアガーを使用している方が多いと思いますが、実は高い部類の製品を使用している可能性が高いです。今回は、これらアガーを用いた培養実験のコストダウンについて記事を書こうと思います。

アガーについて

 アガーとアガロース、、、ありますね。アガロースは、アガーをさらに精製したモノなんです。なので当然、アガロースの方が高いです。以前、アガーを使って寒天培地を作製するところを、アガロースを使っている学生がいてドロップキックしたくなったことがあります(笑)。アガロースのほうが高いんじゃーと思ったものです。
 ワタシは寒天なんてなんでもええわと思っています。しかしながら、最近(なのかな)では寒天に含まれるフランカルボン酸誘導体がある種の微生物の増殖に影響を与えていたという衝撃の報告もあったりします。

Trace Amounts of Furan-2-Carboxylic Acids Determine the Quality of Solid Agar Plates for Bacterial Culture

 各社のアガーで含有量に差があるのでしょうか?知りたいところです。

様々なメーカー品のコスト

 とりあえず、様々なメーカーの安い部類に入るアガーを探してみました。アガー(というか微生物用培地製品)と言えば、BD(Difco)という老害高齢研究者も多いですよね。要するに、BD(Difco)にあらずんば、培地に非ず。ところが!BD(Difco)!高い!

メーカー 製品名 定価(税抜) 入数 1 gあたりの単価
BD Agar 31900円 454 g 70円
JUNSEI Agar 8700円 500 g 17.4円
KOKUSAN Agar 12000円 500 g 24円
伊那食品工業 Agar BA-10, High Quality 7500円 500 g 15円
米山薬品工業 Agar 8400円 500 g 16.8円
ナカライテスク Agar 9800円 500 g 19.8円
理科研 STAR Agar L-grade 01 8500円 500 g 17円

(2018年6月現在)

 探せる範囲でリスト化してみましたが、こう眺めてみると価格差がかなりありますね。ちなみにBD(Difco)は、ぶっちぎりで高いです。しかも、454 g入っていう謎の容量はなんなのでしょうか(笑)

結局どれがいいの?

 研究費に乏しい貧乏研究者なワタシは、コストダウンを考えた結果、現在は理科研のSTAR Agar L-grade 01の500 g入を購入して使用しています。これは、1 gあたり17円という格安の部類にあります。長年使用していますが、全く問題ないです。

キャンペーン時に購入せよ

 定価でも安いこの製品ですが、キャンペーンが強烈です(笑)例年、何度かキャンペーンで安売りをしています。なんと、1 gあたり8.5円!!!ちなみに、キャンペーンやって無くてもこの値段にしてくれるかも? f:id:kanenashi_kenkyu:20180609105640j:plain

終わりに

 このように、普段使用する試薬であるアガーの場合、製品を変更するだけで半額以下(場合によっては1/10ほど)のコストカットが可能になりました。年間1000 g使用するとした場合、BD(Difco)を切り捨てるだけで60000円以上のコストカットになりますね!浮いたお金で割ってしまったマイヤーを買えそうです(笑)。

研究費もマンパワーもないけど、なんとか実験して論文を出していきたいですね。